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著作権相談室 特許事務所 著作権相談室
法務室長 弁理士 祐末 輝秀
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著作権について

カタログから見る著作権1


法務室長弁理士 祐末輝秀

1.はじめに
カタログとは、広辞苑(第6版)によれば、「目録。商品目録。営業案内。」を意味するということです。言い換えれば、カタログは、会社が取り扱っている商品や、会社の営業自体を紹介するもの、主として冊子ということができます。
カタログには、商品や業務内容をわかりやすく紹介するために写真やイラストが掲載されることが少なくありません。また、商品によっては、デザイナーやタレントの写真が掲載されることもあります。このうち写真とイラストは、著作権による保護の対象となるものです(著作権法10条1項4号及び7号)。また、デザイナーやタレントの写真ついては、著作権の保護の対象となるとともに、人格権としての肖像権及びパブリシティーの権利が問題となってきます。
カタログを発行する会社内部で、写真を撮ったりイラストを描いたりする場合は、著作権が問題となることは殆どありません。しかし、一般には、写真はカメラマン等に、イラストはイラストレーター等に依頼することが少なくありません。その場合、カメラマン等と著作権の帰属について、事前に処理を行っておくこと(契約を締結しておくこと)が、後々のトラブルを回避するためにもお互いのために望ましいと考えられます。

2.写真の著作物
(1)写真の著作物性
そもそも何故写真に著作権の対象となる著作物性が認められるのでしょうか。一般的には、「一般に被写体の選択、被写体が人である場合にポーズを取らせること、光量の調節、光線の具合、カメラアングル、構図、背景、照明による光の陰影、露光、絞り、シャッター速度、シャッターチャンス、撮影方法等により独自の創意が認められる」*1ため、写真にも著作物性が認められると理解されています。一方、写真ではあっても、平面的な絵画や書をその通り忠実に映し出した複製写真や機械の部品などのカタログ写真は、著作物の要件として求められる「創作性」がないため、写真の著作物とは認められないと考えられています*1。

(2)写真の著作物の著作権者
写真の著作物の著作権者はカメラマン個人になります(東地判昭和61年6月20日)。素人が撮影したスナップ写真であっても同様です(知財高判平成19年5月31日)。そして、特にカタログに掲載する写真の場合には、いわゆる職務著作(著作権法15条1項)に該当するケースは殆どありません。なぜなら、職務著作の要件である「その法人等が自己の著作名義の下に公表するもの」を満たすことは稀だからです。というのは、カメラマンが所属している会社等の名前の下で写真を公表することは殆どなく、カタログを発注した会社の名前の下で写真を公表するのが一般的だからです。

著作者がカメラマン個人であるとすると、カタログを発注した会社は、そのカメラマンから著作権を購入するか、カタログに写真を掲載することを認めてもらわなければなりません。いくら支払ったかにもよりますが、一般的には写真撮影の代金に著作権譲渡の対価が含まれていると考えられることが多いでしょう。さらに、カメラマンからネガを引き渡してもらった場合には、著作権の譲渡があったと認められることになろうかと思います。

(3)同一性保持権
しかしながら、著作権の譲渡があったとしても、カメラマンには著作者人格権の一つである同一性保持権(著作権法20条1項)が認められます。この同一性保持権は人格権なので、譲渡することができません(著作権法59条)。したがって、著作権の譲渡を受けても、カメラマンには同一性保持権が残るということになります。同一性保持権が残るということは、譲渡した後の著作物についても、カメラマンは「意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない」権利を持っていることになります。この「変更、切除その他の改変」は厳格であり、デジタル写真の加工さえ場合によってはこの「改変」に含まれ、同一性保持権の侵害となります。

とはいえ、カタログを発注した会社としては、お金を払ったにも拘わらず自由に写真を使えないというのは非常に不便です。そのため、反対する見解もありますが、カメラマンとの契約において、カメラマンはカタログを発注した会社に対して著作者人格権を行使しない、という特約条項を設けるのが一般的です。この特約条項を含んだ契約を締結しておけば、通常同一性保持権は行使されませんので、自由に写真を改変することができることになります。

(4)複製権
「著作権」というのはいろいろな権利をまとめた総称です。具体的な権利については、著作権法21条から28条までに列挙されています。カタログ写真において特に問題となる権利は、「複製権」(著作権法21条)と「公衆送信権」(著作権法23条1項)です。

著作権法上「複製」とは、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」と定義されています(著作権法2条15号)。より具体的には、判例において、「著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び型式を覚知させるに足りるものを再製することをいう」とされています(最判昭和53年9月7日)。したがって、仮に既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、「複製」に該当しないことになりますので、著作権侵害の問題を生ずる余地はないことになります。

これを写真の著作物にあてはめますと、写真の著作物の複製というためには、「被写体の選択、被写体が人である場合にポーズを取らせること、光量の調節、光線の具合、カメラアングル、構図、背景、照明による光の陰影、露光、絞り、シャッター速度、シャッターチャンス、撮影方法等」の要素を全て原著作物に依拠することが必要となります。したがって、写真の著作物が複製権によって保護される範囲は狭いものとならざるを得ず、事実上、写真の著作物をスキャナーで取り込むようなデッドコピーを排除することができるにすぎないといえるでしょう。

(5)公衆送信権
著作権法上「公衆送信」とは、「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線通信の送信を行うこと」と定義されています(著作権法2条7号の2)。例えば、テレビ・ラジオなどの放送や、ケーブルテレビなどの有線放送、インターネットを通じてのインタラクティブ送信である自動公衆送信などが「公衆送信」に含まれます。なお、送信行為そのものだけでなく、その前段階である、著作物をアップロードする送信可能化も、「公衆送信」に含まれます。したがって、まだ誰もアクセスしておらず、送信がなされていない段階でも、無段でアップロードなどを行うと、その時点で権利侵害となります。

よって、他人が著作権を持っている写真を、無断でスキャン等することによってデータ化すればその時点で複製権侵害となり、そのデータをウェブ等にアップロードすればその時点で公衆送信権侵害となります。


*1 レクシスネクシス・ジャパン株式会社発行 三山裕三著 「[第7版]著作権法詳説-判例で読む16章」71頁

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カタログから見る著作権2

3.イラスト
一般に、イラストは絵画の著作物、すなわち、美術の著作物(著作権法10条1項4号)として保護されます。しかし、カタログに掲載されるイラストは、鑑賞を目的とする通常の絵画とは異なり、商品の特徴などを伝える実用的な側面もあります。

絵画的な商業広告に関し、裁判所は「全体として一つの纏まりのあるグラフィック(絵画的)な表現物として、見る者の審美的感情(美感)に呼びかけるものがあり、かつ、その構成において作者の創作性が表れているとみられる」場合には、「このようなグラフィック作品としても、法10条1項4号が例示する絵画の範疇に類する美術の著作物と認め得るものである」と判示しています(大阪地判昭和60年3月29日 商業広告事件)【判決文】 【別紙】。したがって、カタログを見る者の美感に呼びかけるようなイラストであれば、美術の著作物として保護されることになります。この、「美感に呼びかける」か否かは程度問題であり、一律に基準を定めることができませんので、個別に判断していくことになります。なお、他のイラストを複製したものは、創作性が認められませんので、著作物には該当しません。

当該イラストが美術の著作物に該当する場合には、写真の著作物と同様な著作権処理(契約)が必要となります。イラストの著作権者はイラストレーターになりますので、イラストレーターとの間で著作権譲渡及び著作者人格権不行使について、契約を締結しておく必要があります。

4.編集著作物としてのカタログ
カタログ自体が編集著作物(著作権法12条1項)として保護を受けられる場合もあります。この点について裁判所は「本件カタログは、カーテン用副資材の製造販売を業とするパロマの商品を紹介するものであって、掲載するパロマの商品の全体的な配列について、①パロマがカーテンフックの製造メーカーから出発したものであることから、他の副資材メーカーに比べてフックの商品のバリエーションが多いことを考慮して、カーテンフック類がカタログの冒頭にくるように配列され、②トリミング材については、レーストリムを中心として白いレース系のトリミング材とその他の着色されたフレンジ(トリミング材)とを区別し、前者を「レース・トリム」として一章を設け、後者をタッセルと一体とし「フレンジ&タッセル」の一章にまとめる等の工夫がされていること、さらに、各章の冒頭部分には当該章において紹介する商品の機能、用途、特質、商品開発の基本思想をまとめた短文を配し、個々の商品の紹介部分にも商品を実際に使用する際の使用方法や留意点について説明文を付していること、また、ギャザーテープ及びバルーンテープの写真について、別々に撮影したギャザーテープ又はバルーンテープの写真とこれを使用したカーテンの写真とを上下二段あるいは左右に並べて、ギャザーテープ又はバルーンテープの形状とその具体的使用方法が一目瞭然に理解できるように工夫していることが認められる。以上の点から、本件カタログは、編集物でその素材の選択、配列によって創作性を有するから、編集著作物に該当するものというべきである」と判示しています(大阪地裁平成7年3月28日 商品カタログ事件)【判決文】

したがって、カタログで紹介される商品や説明図等の選択・配列に工夫がみられる場合には、カタログ自体が編集著作物として保護の対象となります。よって、カタログの内容を変更することなく、題号等を変更したにすぎないようなものは、カタログの編集著作物に関する著作権の侵害となります。

5.肖像権とパブリシティの権利
カタログ中に、デザイナーや芸能人の人を被写体とした写真を用いることも少なくありません。その場合問題となるのが、肖像権とパブリシティの権利です。

カタログではないのですが、商品の購入者(非芸能人)の顔写真と実名の入った製品の広告が合意範囲を超えて新聞に掲載された事案で、裁判所は、「人がその意思に反して氏名を使用されず、また肖像を他人の目にさらされずにいられる自由は、法的保護に値する利益である」と判示し、合意範囲を超えた新聞への広告掲載を不法行為と認定しました(東京地判平成1年8月29日 サウナ事件 判例時報1338号119頁)。

この判決から、①肖像権は法的保護に値する利益であること、②広告掲載について合意があれば、その合意が優先すること、③合意範囲を超えた広告掲載は不法行為となること、が見て取れます。このことは、新聞広告ではなくカタログであっても同じだと考えられます。すなわち、芸能人でなくても肖像権は法的保護に値する利益であり、カタログ掲載については被写体の同意が必要であり、同意を得なかったり被写体と合意した範囲を超えて写真を使用したりした場合は不法行為となる、ということになります。したがって、デザイナー等の写真をカタログに掲載する場合には、当該デザイナー等の同意を事前に得ておくことが必要となります。

また、被写体が芸能人である場合には、パブリシティの権利が問題となります。パブリシティの権利を定義することは難しいのですが、裁判所は「固有の名声、社会的評価、知名度等を獲得した芸能人の氏名・肖像を商品に付した場合には、当該商品の販売促進に効果をもたらすことがあることは、公知のところである。そして、芸能人の氏名・肖像がもつかかる顧客吸引力は、当該芸能人の獲得した名声、社会的評価、知名度等から生ずる独立した経済的な利益ないし価値として把握することが可能であるから、これが当該芸能人に固有のものとして帰属することは当然のことというべきであり、当該芸能人は、かかる顧客吸引力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利を有するものと認めるのが相当である」と判示し、「パブリシティの権利」の語自体は用いていませんが、「顧客吸引力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利」であると認定し、損害賠償請求のみならず差止請求を認めています(東京高裁平成3年9月26日 おにゃん子クラブ事件 判例時報1400号3頁)。したがって、顧客吸引力を有する芸能人を被写体とした写真をカタログに掲載するときには、当該芸能人又は当該芸能人の属するプロダクションの同意を事前に得ておくことが必要となります。

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カタログから見る著作権3

6.判決例紹介
カタログとその掲載写真について実際に争われた裁判例があります。通称「雪月花事件」といわれているものです。この裁判では、宣伝用カタログの写真の背景として写された「書」に係る著作権等の侵害が争われました。

(1)第1審(平成10年(ワ)第14675号)【判決文】 【別紙】
(A)事実関係
原告は、昭和58年日本書道美術館展推薦賞、昭和59年汲五書展朝日新聞社賞、昭和61年墨東書展日本美術協会賞等の各賞を受賞し、平成3年ころから、錦糸町西武百貨店において個展を開催して、活動している書家であり、原告は、平成4年、5年ころまでに、原告各作品(別紙目録1ないし3)を創作、完成した。
原告作品1は、「雪月花」を縦書き二行に、縦約70ないし80センチメートル、横約60センチメートル程の大きさの紙面に、柔らかな崩し字で、原告作品2は、「吉祥」を右から左へ横書きに、縦約50ないし60センチメートル、横約50センチメートル程の大きさの紙面に、肉太で直線的に、原告作品3は、「遊」を中央に、縦約40センチメートル、横約40センチメートル程の大きさの紙面に、流麗な崩し字で、いずれも毛筆で書した作品である。
被告各カタログは、被告の販売に係る照明器具の宣伝、広告用に作成され、カタログには縦約31センチメートル、横約25.5センチメートルの大きさで、5600頁の大部のカタログである。カタログには、照明器具を設置した和室を撮影した以下のとおりの各写真が掲載されている。右各写真は、いずれも、①天井面に被告の室内照明器具が設置されている、②和室の中央に座卓がおかれている、③後方の床の間に生花が装飾的に配置されている、④床の間の壁面に原告各作品(表装され、掛け軸とされたもの)が配されている、⑤原告各作品部分における一文字の大きさは、3ミリメートルないし8ミリメートルである点で共通し、これらを含む和室全体が被写体として撮影されたものである。なお、被告カタログに原告各作品が撮影された経緯は、右カタログにおいて、被告が販売する照明器具を室内に配置した状況を写真により紹介するため、住宅会社が展示していたモデルハウスの和室を利用して撮影したが、右モデルハウス内に、住宅会社が原告各作品を配置していたことによる。

(B)裁判所の判断
著作権法は、複製について、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」をいうと規定する(著作権法2条1項15号)。右複製というためには、原著作物に依拠して作成されたものが、原著作物の内容及び形式の特徴部分を、一般人に覚知させるに足りるものであることを要するのはいうまでもなく、この点は、写真技術を用いて再製された場合であっても何ら変わることはない。
ところで、書は、本来情報伝達という実用的機能を有し、特定人の独占使用が許されない文字を素材とするものであるが、他方、文字の選択、文字の形、大きさ、墨の濃淡、筆の運びないし筆勢、文字相互の組み合わせによる構成等により、思想、感情を表現した美的要素を備えるものであれば、筆者の個性的な表現が発揮されている美術の著作物として、著作権の保護の対象となり得るものと考えられる。そこで、書については、その複製がされたか否かを判断するに当たっては、右の趣旨に照らして、書の創作的な表現部分が再現されているかを基準としてすべきである。
この観点から、原告各作品と被告カタログ中の原告各作品部分を対比する。
原告各作品は、原告作品1については、「雪月花」の各文字を柔らかな崩し字で、原告作品2については、「吉祥」の文字を肉太で直線的に、原告作品3については、「遊」の文字を流麗な崩し字で、原告が、40センチメートルないし7,80センチメートルの紙面上に、毛筆で書したものである。他方、被告カタログ中の原告作品部分は、原告各作品が、紙面の大きさ6ミリメートルないし20ミリメートル、文字の大きさ3ミリメートルないし8ミリメートルで撮影されているが、通常の注意力を有する者がこれを観た場合、書かれた文字を識別することはできるものの、墨の濃淡、かすれ具合、筆の勢い等、原告各作品の美的要素の基礎となる特徴部分を感得することは到底できないものと解される。
してみれば、被告カタログ中の原告各作品部分は、墨の濃淡、かすれ具合、筆の勢い等の原告各作品における特徴的部分が実質的に同一であると覚知し得る程度に再現されているということはできないから、原告各作品の複製物であるということはできない。

(2)第2審(平成11年(ネ)第5641号)【判決文】【別紙】
裁判所の判断
本件各作品の複製の成否を判断する前提として、まず、書の著作物としての特性について検討する。
書は、一般に、文字及び書体の選択、文字の形、太細、方向、大きさ、全体の配置と構成、隅の濃淡と潤渇(にじみ、かすれを含む。以下、同じ。)などの表現形式を通じて、文字の形の独創性、線の美しさと微妙さ、文字群と余白の構成美、運筆の緩急と抑揚、墨色の冴えと変化、筆の勢い、ひいては作者の精神性までをも見る者に感得させる造形芸術であるとされている。他方、書は、本来的には情報伝達という実用的機能を担うものとして特定人の独占が許されない文字を素材として成り立っているという性格上、文字の基本的な形(自体、書体)による表現上の制約を伴うことは否定することができず、書として表現されているとしても、その自体や書体そのものに著作物性を見いだすことは一般的に困難であるから、書の著作物としての本質的な特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分は、字体や書体の他、これに付け加えられた書に特有の上記の美的要素に求めざるを得ない。そして、著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することであって、写真は再製の一手段ではあるが(著作権法2条1項15号)、書を写真により再製した場合に、その行為が美術の著作物としての書の複製に当たるといえるためには、上記表現形式を通じ、単に字体や書体が再現されているにとどまらず、文字の形の独創性、線の美しさと微妙さ、文字群の余白の構成美、運筆の緩急と抑揚、墨の冴えと変化、筆の勢いといった上記の美的要素を直接感得することができる程度に再現がされていることを要するものというべきである。
このような観点から検討すると、本件カタログ中の本件各作品部分は、上質紙に美麗な印刷でピントのぼけもなく比較的鮮明に写されているとはいえ、紙面の大きさの対比から、本件各作品の現物のおおむね50分の1程度の大きさに縮小されていると推察されるものであって、「雪月花」、「吉祥」、「遊」の各文字は、縦が約5~8ミリメートル、横が約3~5ミリメートル程度の大きさで再現されているにすぎず、字体、書体や全体の構成は明確に認識することができるものの、墨の濃淡と潤渇等の表現形式までが再現されていると断定することは困難である。(中略)
そうすると、以上のような限定された範囲での再現しかされていない本件カタログ中の本件各作品部分を一般人が通常の注意力をもって見た場合、これを通じて、本件各作品が本来有していると考えられる線の美しさと微妙さ、運筆の緩急と抑揚、墨色の冴えと変化、筆の勢いといった美的要素を直接感得することは困難であるといわざるを得ない。(中略)
したがって、本件カタログ中の本件各作品部分において、本件各作品の書の著作物としての本質的な特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分が再現されているということはできず、本件カタログにおける本件各作品が写された写真を掲載した被控訴人の行為が、本件各作品の風声に当たるとはいえないというべきである。

(3)検討
カタログ写真の背景に、他人の著作物が入り込むことは少なくありません。上記裁判は、「書」が背景として入り込んでいた事例です。そして、「書」という美術の著作物の特徴を踏まえて、最終的に「複製」には該当しないと判断しました。したがって、上記判決から明らかなのは、「書」についてだけです。

それでは「書」以外の美術の著作物についてはどのように考えるべきでしょうか。上記判決の考え方に従えば、当該美術の著作物の特徴的部分が再現されているといえない限り、「複製」には該当しないということになります。特徴的部分がいかなるものかは、美術の著作物によって異なりますので、一般的に述べることはできません。

この点については、問題意識は共有されているものの、未だ定説はない状況です(判例時報1800号201頁(判例評論527号39・評釈者:作家文雄)参照。同氏は英国法31条もひとつの参考になり得ると指摘しています)。このような理論状況を前提とすれば、絵画等の美術の著作物を背景に入れる場合には、当該絵画の特徴部分はどこか、その特徴部分が写真によって再現されているか、ということを検討した上でカタログへの掲載を判断することが望ましいと思われます。

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法人著作について

1.はじめに
特許法においては、「発明した者」、すなわち発明者たる自然人が特許を受けることができると規定されており(特許法29条1項柱書き)、職務発明の要件、すなわち、「使用者等は従業者等がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明」である場合には、契約、勤務規則その他の定めに基づいて、相当の対価の支払を受けることを条件に、特許を受ける権利又は特許権を使用者たる法人等に譲渡することになります(特許法35条2項及び同3項)。この規定をよりどころとして、多数の職務発明に関して「相当の対価」の支払(同条3項)を求める訴訟が提起されたことは記憶に新しいと思います。

一方、著作権法においては、同法15条1項において、「法人その他使用者(以下この条において『法人等』という)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作権は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。」と定められています。すなわち、著作権法においては、一定の要件を満たせば、最初から法人等が著作権者になることができます。

そして、1項のかっこ書きで排除されたプログラム著作物については、同条2項で、「法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。」と定められ、プログラム著作物については法人名義の公表は要件とされていません。

著作権法15条の規定により法人等が著作者とされた場合には、著作者人格権(同法18条(公表権)・同19条(氏名表示権)・同20条(同一性保持権))も法人等にのみ認められることに注意を要します。

2.法人著作とされるための要件

著作権法15条1項は、上述のとおり、「法人その他使用者(以下この条において『法人等』という)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作権は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。」と定めています。そこで、法人著作と認められるための要件を、一つ一つ取り出して検討したいと思います。

① 法人その他使用者の発意に基づくものであること

一般には、使用者が自らのイニシアチブのもとに著作物の作成を決断することをいうと考えられています。

なお、「法人その他使用者」に「個人としての使用者」が含まれるか否かが問題となり得ますが、「法人」には広く「法人格を有しない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」が含まれていますので(2条6項)、このような法人を除く「その他使用者」には、個人の使用者も含まれると一般に解されています。

また、「発意」に関し、著作物の作成について法人等の具体的な指示あるいは承諾がないまま業務従事者が自らの判断で著作物を作成した場合にこの要件を満たすか否かが問題となります。この点に関し、いろいろな考え方が提唱されていますが、法人等が業務従事者を一定の職務に配属し、かつその職務上当然に当該業務従事者による一定の著作物の作成が予期ないし予定されている場合には発意があったといえるとする考え方が有力なようです。

② その法人等の業務に従事する者が職務上作成するものであること

まず、「法人等の業務に従事する者」は、法人等の雇用関係がある者が該当します。問題は雇用関係のない派遣労働者や請負の場合に、この要件を満たすか否かです。

派遣労働者については、具体的な指揮命令を派遣先から受けることから、含まれると解する立場が有力です。しかし、請負の場合は、本条の規定を法人等の外部まで適用することになるため、否定的な考え方が有力です。

また、「職務上作成すること」は、法人等の業務に従事する者が職務上の業務遂行としてなす著作行為であると解されており、業務従事者が法人等から直接命令された場合はもちろんのこと、直接の命令がない場合であっても、法人等の業務に従事する者の職務上の義務遂行として通常予期されている、あるいは予定されている著作行為も含まれると解されています。

ちなみに、「職務上」か否かは勤務時間や勤務場所によって決まる問題ではないと広く考えらており、自宅に持ち帰って作成したような場合であっても、法人等の業務に従事する者の職務上の義務遂行として通常予期されている、あるいは予定されている著作行為である限り、「職務上作成すること」にあたると考えられています。

③ 法人等が自己の著作の名義の下に公表すること

未だ公表されていない著作物であっても、将来法人の著作名義で公表することが予定されていれば、この要件を充足すると解されています。

④ 契約、勤務規則、その他に別段の定めがないこと

この要件は、当事者間で人格的利益を保護する必要があると認められた場合に、職務従事者を著作者とする余地を残すためのものと考えられています。なお、契約等は、著作物の作成時に存在している必要があります。

3.判決例の概観

上記②の要件に関し、雇用関係に該当するか否かの争いが最高裁までもつれた事例を紹介します。

東京地裁平成9年(ワ)第5200号(第一審)

事実関係

原告は、平成5年7月15日観光ビザで来日しましたが、在留期間が徒過したため同年10月1日に香港に戻り(第1回目の来日期間)、同年10月31日に観光ビザで再度来日し、平成6年1月29日まで日本に滞在しました(第2回目の来日期間)。その後同年5月14日まで香港に戻っていましたが、その間の3月末に在留資格認定証明書が発行され、就労ビザを取得したことから、同年5月15日から本格的に日本に滞在することになりました。

被告の代表取締役【B】は、原告の第1回目の来日に際して、原告に対し、他社における研修が困難であることを説明したところ、原告は被告において勤務することを希望したため、【B】は、被告において原告を雇用することとし、賃金は月額12万円とし、勤務時間その他の就労条件について説明し、一審原告も、これらの条件を了承したということです。そして、【B】は、その後被告の本社において、出勤した原告に対し、従業員が業務上作成した著作物は被告に帰属する旨の条項が記載されている就業規則を示しながら、勤務条件等を重ねて説明した、というのが被告の陳述ないし供述です。

原告の主張

原告は、「原告と被告は、平成5年7月20日、原告が被告に対しキャラクターデザインの原画を作成提供し、被告が原告に対しその対価を支払うという請負契約又は準委任契約を締結した。原告の創作した本件図画は、右請負契約又は準委任契約に基づくものであるから、その著作権は原告が取得する」と主張しました。

裁判所の判断

しかしながら、裁判所は、「原告と被告との間に、平成5年7月15日ころ、雇用契約が締結されたと解することができる」と判示しました。その理由として、

①被告の代表者である【B】は、原告と契約を締結するに当たって、あらかじめ勤務時間、給与等の諸条件を説明し、原告もこれを了承しているが、その合意の内容は、雇用契約と解するのが合理的であること

②被告から原告に対しては、原告がデザインを作成した出来高と関係なく、給与等の名目で毎月定額が支払われており、給与明細書が同時に交付され、また、その後、雇用保険料及び所得税の源泉徴収がされているが、このような措置に対して、原告は一切異議を述べたことはないことに照らすと、原告が支給を受けた金員の性質について、請負等の業務に対する対価と解する余地は全くないこと、

③被告から原告に対し支給された金額の多寡については、原告に対して賄い付きの下宿を提供していたこと、被告が原告の日本式アニメーションに関する技術習得の希望に沿って協力していた事情に照らすと、給与として必ずしも低額とはいえないこと
④作業の状況をみると、就業に必要な作業場所、道具についてはすべて被告が用意していること、被告は、原告に対し、デザイン作成について、個別的具体的に指示をし、その指示に従って、原告が作業をしていること

を挙げ、これらの「事情を総合的に考慮すると、原告と被告との間に締結された契約は、雇用契約であると解するのが相当である」と結論づけました。

東京高裁平成11年(ネ)第4341号(控訴審)

控訴審においては、被控訴人(一審被告)の就業規則および給与支払明細書が問題となりました。

裁判所は、被控訴人(一審被告)の就業規則について検討し、証言および本人尋問に基づいて、就業規則が印刷されたのは平成6年1月以降であることは明らかであるとし、「【B】が就業規則を示して勤務条件を控訴人に説明したとの前記陳述記載部分ないし供述部分は、客観的な資料に基づくものとはいえず、採用することができない」と判示しました。

また、給与支払明細書には、「控訴人が被控訴人から、第1回目及び第2回目の来日期間中である平成5年8月分ないし平成6年2月分として、毎月、基本給名目で12万円(さらに、平成5年8月分は特別手当の名目で5万円)の支給を受けた旨の記載がある。控訴人も、第1回目及び第2回目の来日期間である約6月間にこれら合計77万円の支払を受けていたこと自体を争っているものではない。しかしながら、そこには、健康保険料や雇用保険料、所得税等の控除はなく、控訴人が右額の支払を受け、その支払名目が給料とされていたことをもってしても、控訴人が被控訴人との間で雇用契約を締結したことを認めることはできない」として、第1回目及び第2回目の来日期間における雇用関係を否定しました。

最高裁平成13年(受)第216号(上告審)

以上のとおり、控訴審は、控訴人(一審原告)の主張を一部認容しましたが、これを不服とした被控訴人(一審被告)は、最高裁に上告しました。

最高裁はこの上告を受理し、以下のとおり述べ、原審を破棄差し戻しにしました。

著作権法15条1項は、法人等において、その業務に従事する者が指揮監督下における職務の遂行として法人等の発意に基づいて著作物を作成し、これが法人等の名義で公表されるという実態があることにかんがみて、同項所定の著作物の著作者を法人等とする旨を規定したものである。同項の規定により法人等が著作者とされるためには、著作物を作成した者が「法人等の業務に従事する者」であることを要する。そして、法人等と雇用関係にある者がこれにあたることは明らかであるが、雇用関係の存否が争われた場合には、同項の「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは、法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに、法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを、業務実態、指揮監督の有無、対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して、判断すべきものと解するのが相当である。

これを本件についてみると、・・・被上告人は、1回目の来日の直後から、上告人の従業員宅に居住し、上告人のオフィスで作業を行い、上告人から毎月基本給名目で一定額の金銭の支払を受け、給料明細書も受領していたのであり、しかも、被上告人は、上告人の企画したアニメーション作品等に使用するものとして本件図画を作成したのである。これらの事実は、被上告人が上告人の指揮監督下で労務を提供し、その対価として金銭の支払を受けていたことをうかがわせるものとみるべきである。ところが、原審は、被上告人の在留資格の種別、雇用契約書の存否、雇用保険料、所得税等の控除の有無等といった形式的な事由を主たる根拠として、上記の具体的事情を考慮することなく、また、被上告人が上告人のオフィスでした作業について、上告人がその作業内容、方法等について指揮監督をしていたかどうかを確定することなく、直ちに3回目の来日前における雇用関係の存在を否定したのである。そうすると、原判決には、著作権法15条1項にいう「法人等の業務に従事する者」の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ず、論旨は理由がある。

以上によれば、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、前記の点に付き更に審理を尽くさせるため、上記部分に付き本件を原審に差し戻すこととする。

このように、最高裁は、15条1項の「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは、「法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに、法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを、業務実態、指揮監督の有無、対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して、判断すべき」との解釈基準を明らかにしました。

東京高裁平成15年(ネ)第2088号(差戻控訴審)

上記最高裁判決によって差し戻された控訴審において、最高裁で示された一般的基準にしたがって以下のように総合的に考慮した判断を行っています。

本件において、・・・控訴人は、1回目の来日の直後から、被控訴人の従業員宅に居住し、被控訴人オフィスで作業を行い、被控訴人から毎月基本給名目で一定額の金銭の支払を受け、給料支払明細書も受領していたのであり、しかも、控訴人は、被控訴人の企画したアニメーション作品等に使用するものとして本件全図画を創作した者である。上記事実によれば、控訴人は、1回目の来日後から被控訴人の指揮監督下で労務を提供し、その対価として金銭の支払を受けていたものと推認されるところである。

もっとも、雇用契約の成立を明確に示す雇用契約書等の存在を認めるに足りる証拠はなく、1回目と2回目の来日の際には、控訴人がいわゆる就業ビザを取得しておらず、また、1回目の来日時には被控訴人が控訴人に対し就業規則を示して勤務条件を説明した旨の証拠も直ちに信用することはできない。更に、1回目と2回目の来日時においては、被控訴人から支払われる上記金銭の中から雇用保険料、所得税等が控除されていないことは明らかであり、証拠によれば、控訴人が雇用保険被保険者資格を取得したのは、3回目の来日期間中の平成7年4月1日であることが認められる。しかしながら、これらの諸点は、雇用関係の存否を上記の見地から実質的、総合的に考察する上で、決定的ないし重要な地位を占める判断要素であるということはできない。

ところで、控訴人は、被控訴人のオフィスにおいては、従業員についてタイムカードや外出届が義務付けられていたが、控訴人は、平成7年4月までは、これらが義務付けられておらず、全く管理がされていなかったこと、控訴人は、被控訴人から、作業について、その内容、方法等について指揮を受けたことはないこと、控訴人は、日本のアニメーション制作技術習得のための研修を希望して来日したのであり、被控訴人オフィスで作業し、被控訴人の従業員宅に居住したこと、日本滞在中に毎月一定額の金銭の支払を受けたことも、上記研修のための特別待遇の一つであり、雇用関係の成立とは全く無関係であることなどから、控訴人と被控訴人との間に締結された契約は、控訴人が被控訴人に対しキャラクターデザインの原画を作成提供し、被控訴人が控訴人に対しその対価を支払うという請負契約又は準委任契約というべきであると主張し、控訴人作成の各陳述書の記載及び原審における控訴人本人尋問の供述中には、これに沿う部分がある。

しかしながら、控訴人は、平成7年4月、スタッフルームの一室を退去してアパートに引っ越すまでの間は、当初は、被控訴人の従業員宅に居住し、出勤するEの自家用車に同乗して、被控訴人肩書所在地のオフィスに通い、その後も、スタッフルームの一室に居住し、同所において作業をしていたものである。この点について、Bは、原審における被控訴人代表者尋問において、平成7年4月、被控訴人が、アパートに引っ越し、そこから被控訴人オフィスに通うようになるまでは、タイムカードを刻印させる必要がなかった旨を供述しているところ、同供述は、控訴人にタイムカードが義務付けられていなかった理由として首肯し得るところであり、また、外出届が義務付けられていなかったとの控訴人作成の各陳述書及び控訴人本人尋問の供述は、これを裏付ける的確な証拠はなく、反対趣旨の証拠の記載に照らし、直ちに採用することができない。他方、控訴人の作業状況をみると、就業に必要な作業場所、画材等は被控訴人が調達し、控訴人が被控訴人の指示に従って図画を作成していたのであるから、控訴人は、被控訴人の指揮監督下において本件図画作成等の労務を提供していたものと認めることができる。また、被控訴人が控訴人に支給した上記金銭の額は、基本給名目が3回目の来日時に倍増されているが、1回目及び2回目の来日時のものを基準にしても、被控訴人が負担した被控訴人の従業員宅に賄い付きで居住した費用も考慮すると、研修のための特別待遇を理由として受ける金額というには高額すぎるというべきである。そして、被控訴人から控訴人に支給された金銭は、控訴人が創作した図画の出来高とは無関係に毎月一定額が支払われ、給与支払明細書が交付され、控訴人は上記対価の額、支払方法及びその名目について異議を述べたことがない上、控訴人が本件全図画以外に被控訴人のために作成した図画についても被控訴人に報酬を請求することはなかったことに照らすと、控訴人が被控訴人に対して提供した労務の対価であると認めるのが相当である。

以上検討したところによれば、控訴人の上記主張はいずれも採用することができず、他に、上記推認を覆すに足りる証拠はないから、控訴人は、被控訴人の指揮監督下で労務を提供し、その対価として金銭の支払を受けていたものと認めるのが相当であり、控訴人と被控訴人との関係は、1回目の来日後から雇用関係であったというべきである。したがって、本件係争図画を含む本件全図画は、被控訴人の業務に従事していた控訴人が、その職務上作成したものということができる。

そして、上記認定の事実によれば、本件係争図画の作成は被控訴人の発意に基づくものであり、かつ、本件係争図画は被控訴人が自己の著作の名義の下に公表することが予定されていたものと認めるのが相当である。そうすると、本件係争図画は、控訴人が被控訴人との間の雇用契約に基づいて職務上作成したものとであるから、著作権法15条1項の規定により、その著作者は被控訴人というべきである。

以上のように、差戻控訴審においては、最高裁の一般的基準に則って事実を認定・評価し、最終的に原告と被告との間には雇用関係が存在したと認め、原告が作成した図画の著作権者は法人著作として被告に属すると判断しました。

その後、同種の事例においては、前記最高裁の一般的基準に基づいて事実を認定・評価するという傾向が固まりました(例えば、法人著作を否定した東京地裁(ワ)第12686号、法人著作を肯定した知財高裁(ネ)第10003号等)。

以上
参考文献:三山裕三著「著作権法詳説第7版」 
     金井重彦・小倉秀夫編著「著作権法コンメンタール【上巻】」


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