意匠法には、他の知的財産権には見られない特有の制度が数多く設けられています。このような意匠法独特の制度の内容を理解し、通常の出願や特許出願等と組み合わせて利用することによって、より幅広い、強い権利を取得することができます。
関連意匠制度
デザインの開発においては、一つのデザインコンセプトから多くのバリエーションの意匠が創作されるとういう創作実態があります。関連意匠制度は、一つのデザインコンセプトから創作された多数のバリエーションの意匠を効果的に保護する制度です。
意匠法では先願主義を採用し、原則的には、同一人の出願であっても、同一又は類似の意匠についてニ以上の出願があった場合、最先の出願のみが登録となります。しかし、バリエーションの意匠を保護するため、本意匠に係る意匠公報の発行の日前までに同一出願人から出願された場合に限り、例外的に関連意匠としてこれを保護し、各々の意匠について権利行使することができます。
最終的には採用されなかったデザインについても意匠権を得ることによって、意匠の類似範囲を拡張することが可能になります。すなわち、差止請求の観点からすれば、広い範囲での権利行使が可能になります。
(1)関連意匠の登録要件
①本意匠の出願人と同一の出願人による出願であること
②本意匠と類似すること(関連意匠にのみ類似する意匠でないこと)
③本意匠の出願日以降、本意匠の公報発行の前日までに出願されたこと
④本意匠の意匠権に専用実施権が設定されていないこと
⑤新規性・創作非容易性等の一般的な登録要件を具備していること
(2)関連意匠の留意点
関連意匠の意匠権は、原則として、通常の意匠権と同様に独自の効力が認められています。
但し、関連意匠の存続期間は、本意匠の登録日から20年で満了します。また、関連意匠の意匠権の移転、質権の設定、専用実施権の設定は、本意匠の意匠権とともに行わなくてはならず、単独で行うことができません。
部分意匠制度
物品の部分について、独創的で特徴的な創作がなされた場合に、当該部分について意匠登録を認める制度です。独創的で特徴ある部分を取り入れつつ意匠全体では侵害を避ける巧妙な模倣を防止することが可能です。

部分意匠の具体例
- 自転車→サドル部分、ハンドル部分、ベダル部分等
- 携帯電話→アンテナ部分、ボタン部分、画面部分(※画面デザインの意匠)等
- コーヒーカップ→持ち手部分、カップ部分、ソーサー部分等
(1)部分意匠の登録要件
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①物品全体の形態の中で、一定の範囲を占める部分であること
<認められない例>
(『意匠審査基準 71.4.1.1.4』より)
・「建築用コンクリートブロック」

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②他の意匠と対比の対象となりえる部分であること
<認められる例>
(『意匠審査基準 71.4.1.1.6』より)
・「包装用容器」

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<認められない例>
(『意匠審査基準 71.4.1.1.6』より)
・「包装用容器」

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③各部品ごと又は一般的名称で呼べるような部分ごとに示されていること
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<認められないもの>
(特許庁HP『「部分意匠」に関するQ&A』より)
・「繊維製品に表す模様」:
模様のみを部分意匠として意匠登録を受ける
ことはできません。意匠登録を受けたい物品
ごとに出願をする必要があります。
【意匠に係る物品】
繊維製品に表す模様
【意匠の説明】
実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録
を受けようとする部分である。
【表面図】

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<認められるもの>
(特許庁HP『「部分意匠」に関するQ&A』より)
・「ティーシャツ」

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④組物の意匠に係る部分意匠ではないこと
⑤新規性・創作非容易性等の一般的な登録要件を具備していること
(2)部分意匠の意匠権の効力
部分意匠の意匠権も、通常の意匠権と同じく、同一又は類似の範囲に及びます。
なお、部分意匠の類似範囲は、以下の観点から判断されます。
①意匠に係る物品が同一又は類似か否か
②部分における用途及び機能が同一又は類似か否か
③部分の形態が同一又は類似か否か
④全体の形態の中での当該部分の位置・大きさ・範囲が同一又はありふれた範囲内か否か
組物の意匠制度
同時に使用される二以上の物品であって、経済産業省令で定めるものを構成する物品(組物)を全体で一つの意匠として保護する制度です。
たとえばコーヒーセット等のように、デザインに全体として統一感がある場合には、一意匠として出願でき、物品群全体としての模倣に対する権利行使が可能です。
(1)組物の意匠の登録要件
①願書の「意匠に係る物品」の欄に記載されたものが経済産業省令で定めるものであること
経済産業省令によって、56種類の組物が定められています。
⇒ 組物として出願できる物品一覧(施行規則第8条別表2)
②構成物品が適当であること(同時に使用される2以上の物品であること)
③組物全体として統一があること
こんな組物は統一があるといえます
1)形状や模様等が同じような造形処理で統一されているもの
<例>(『意匠審査基準 72.1.1.3.1.1』より)
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・「一組の薬味入れセット」
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・「一組の飲食用ナイフ、フォーク及びスプーンセット」

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2)全体として一つのまとまった形状や模様を表すもの
<例>(『意匠審査基準 72.1.1.3.1.2』より)
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・「一組のいすセット」
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・「一組のテーブルセット」
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3)物語性など観念的に関連がある印象を与えるもの
<例>各構成物品にそれぞれ、松・竹・梅の絵が記載されているもの
④組物の意匠が全体として、新規性・創作非容易性等の一般的な登録要件を具備していること
動的意匠
物品の形態が物品の有する機能に基づいて変化する意匠であって、その変化の状態が静止状態からは予測できない意匠を保護する制度です。
びっくり箱のおもちゃのように、動作の変化の前後に現れる意外性に意匠創作の力点が置かれている場合、かかる動的な意匠についても漏れのない権利保護を与える制度です。
出願の際、変化の前後が分かるような図面を提出することが必要です。
《登録要件》
1一意匠であること
2物品の形態がその物品の機能に基づいて変化すること
3静止様態からは変化した状態を予測できないこと
4視覚に訴える変化があり、その変化に一体性があること
秘密意匠
出願人の請求により意匠権の設定登録の日から一定期間に限り、その登録意匠の内容を秘密にしておく制度です。
製品販売戦略上、意匠を公開することによる不利益から意匠権者を保護することが可能です。
《請求要件》
1出願人が要求する。共願の場合は、共願人全員で請求する必要がある。
2出願時または第1年分の登録料の納付と同時に最長3年の期間を指定して請求する。
3別途手数料の納付が必要です。