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上記トレードマークの背景地図は、1991年当時の特許登録件数を陸地の大きさと形状に擬態化して、地図状に表現したものです。

プライバシーポリシー


新しいタイプの商標
大阪法務部商標室長
東京法務部商標室長

: 武田 憲学
: 山﨑 由貴

東京本部 TEL
: 03 - 3433 - 5810
大阪本部 TEL
: 06 - 6351 - 4384
東京本部 FAX
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1.色彩のみからなる商標

①日本で導入予定の制度概要

 2015年4月1日より施行される改正商標法により、色彩のみからなる商標が登録できるようになる予定である。

  • <識別力判断>
     色彩のみからなる商標についても、伝統的商標と同様に、識別力の有無について判断される。識別力判断においては、商標見本及び商標の詳細な説明の記述(カラーコード等を記載し、色彩を特定。)を勘案した上で、総合的に判断される。
     単色の色彩および複数の色彩を組み合わせた商標については、原則として識別力が認められず、使用により顕著性を獲得した場合にのみ、登録が認められると考えられる。
  • <類否判断>
     色彩のみからなる商標は、対比する両商標の外観について、当該色彩が有する色合い、彩度、明度等を総合的に勘案して、類否判断が行われると考えられる。
    (例:単色の商標の類否判断において、赤と深紅色は類似だが、深紅色とピンクは非類似。)
  • <独占適応性>
     商標法第4条第1項第18号の規定により、例えば、商品「自動車用タイヤ」に単色「黒色」といった出願は、登録が認められないものと考えられる。




②諸外国での登録例
EUTM(共同体商標) 豪州 米国
商標番号:8298499第4類 等 商標番号:8683633第9類 等 商標番号:780092第6類 等 登録番号: 3361597第25類 「女性用ファッションデザイン履物」
<識別力判断>
・単色の色彩のみからなる商標は、全ての商品・サービスにおいて、本来的に識別力は無い(但し、極めて特殊な場合を除く)。 ・色彩の組合せからなる商標の場合、識別力の有無は個別に判断されるが、外観上、色彩が商品を装飾したものにすぎない場合には、識別力は無いものとされている。 ・商品の外装色として使用される単色の色彩のみからなる商標は、本来的に識別性は無い。但し、使用による顕著性獲得を示す証拠の提出は可。 ・色彩の組合せからなる商標の場合、一定程度識別力を有する場合がある。 単色の色彩のみからなる商標と、色彩の組合せからなる商標は、本来的に識別力はない。
<類否判断>
各国によって様々な手法で判断されるものの、特別の審査基準は定められていない。
異議申立がなされた場合に、混同を生ずるおそれの有無により判断される。 需要者の一般的な印象による個別判断がされる。 混同を生ずるおそれの有無により判断される。




③出願戦略

 単色の色彩および複数の色彩を組み合わせた商標については、いずれも原則として識別力が無いと考えられるため、顕著性を示す証拠資料(使用実績)を準備する必要がある。その際、使用実績のある商標と、出願商標とが一致している必要があると考えられるが、完全に色彩が一致した資料のみが、審査・審判の過程で参酌されるとは考えにくい。

 従い、商標見本並びに商標の詳細な説明の記述において、幾つか類似の色彩のパターンについて複数出願を行なうことにより、より使用実績に即した的確な権利保護が可能となると考えられる。









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2.位置商標

①日本で導入予定の制度概要

 位置商標とは、「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合からなる商標」であって、商標を商品又は役務の提供の用に供する物等に付する位置によって、特定されるものとなる予定である。

  • <識別力判断>
     願書への記載として、商標のタイプの記載(位置商標である旨)、商標見本、商標の詳細な説明の記述が求められると考えられる。商標の詳細な説明については、例えば、商品全体における位置の部位の名称、形状、特徴等の具体的な説明が求められると予想される。
     商標見本における位置の特定には、写真で表現する手法の他、部分意匠で行う実線と破線で書き分ける手法と同様の手法が想定され、実線部分が単体でも識別力を有する場合、その位置に関わらず当該位置商標の識別力が認められる場合が多く、一方、実線部分が単体では識別力が無い場合には、当該位置商標は原則として識別力が認められず、使用により顕著性を獲得した場合にのみ、登録が認められると考えられる。
  • <類否判断>
     位置商標は、伝統的商標と同じく、対比する商標の外観、称呼、観念を総合的に勘案する他、当該位置商標の位置の要素を考慮した上で、類否判断が行われるものと考えられる。
     すなわち、実線で特定される標章自体の識別力が強いと考えられる場合、位置が同一又は類似でない場合であっても、対比する商標は類似することが多いと考えられる。




②諸外国での登録例
EUTM(共同体商標) 米国
商標番号:3889615
第25類 「Footwear」
商標の詳細な説明: The trademark consists of a circular band in the shape of a ring on a shoe; it is on the side of the shoe, between the shoe laces and the sole.
登録番号:2851315
第25類 「Footwear」
商標の詳細な説明: Color is not claimed as a feature of the mark. The mark consists of a red stripe placed longitudinally along the middle of the heel of an item of footwear, partly covering the rear of the sole and partly the rear of the item of footwear. Any molding seen on the sole or on the rear part of the item of footwear and/or production characteristic are not part of the mark. The mark is lined for the color red.
登録番号:2363544
第9 類 「Cursor control device sold as a component part of a computer keyboard」
商標の詳細な説明: The mark consists of the color red used on the cursor control device component of the goods. The matter shown in the drawing in broken lines serves only to show positioning of the mark and no claim is made to it. The mark is lined for the color red.
<識別力判断>
EUTM:識別力判断は、商標の通常の使用に従ってなされるのが一般原則。 米国:特に規定なし。
<類否判断>
各国によって様々な手法で判断されるものの、特別の審査基準は定められていない。
異議申立がなされた場合に、混同を生ずるおそれの有無により判断される。 需要者の一般的な印象による個別判断がされる。 混同を生ずるおそれの有無により判断される。




③出願戦略

 位置商標は部分意匠制度との交錯があり、商標として識別力が要求される場合はあるものの、既に新規性を喪失した意匠についても、商標での権利保護の可能性が残されていると考えることが可能である。

 部分意匠と同様に、位置商標においても、当該位置を変えた複数の商標出願を行うことにより、点ではなく面での強い権利保護が可能となると考える。但し、意匠とは異なり、商標の場合には不使用による取消のリスクをも考慮した判断が必要となるであろう。









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3.音商標

①日本で導入予定の制度概要

 2015年4月1日に施行される改正商標法により、音商標が登録できるようになる。

  • <識別力判断>
    音商標の識別性は、音商標を構成する音の要素(音楽、自然音等)及び言語的要素(歌詞等)を総合して、商標全体として判断される予定である。
    従い、音商標の構成中、言語的要素が第3条第1項各号の規定に該当しない場合には、商標全体としても第3条第1項各号の規定に該当しないものとなり、また、音の要素が第3条第1項各号の規定に該当しない場合には、商標全体としても第3条第1項各号の規定に該当しないものとなる。

    (例)以下の音商標あるいは音は、原則として識別力がない。
    • ・商品又は役務の普通名称・慣用標章を単に読み上げたに過ぎない音商標。
    • ・商品が通常発する音又は役務の提供にあたり通常発する音を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標((例)商品「炭酸飲料」について、「『シュワシュワ』という泡のはじける音」)。
    • ・単音やこれに準ずる極めて短い音。
    • ・自然音を認識させる音。
    • ・需要者がクラシック音楽、歌謡曲、オリジナル曲等の楽曲としてのみ認識する音。
    • ・商品の機能を確保するために不可欠な音又は役務の提供にあたり不可欠な音ではないが、その市場において商品又は役務に通常使用される音。
    引用文献:「資料1 商標審査基準たたき台案 平成26年11月26日」
  • <類否判断>
    音商標においては、音商標を構成する音の要素(音楽的要素であるメロディー、ハーモニー、リズム、テンポ、演奏楽器や声域等により異なる音色その他自然音等)及び言語的要素(歌詞等)を総合して、商標全体として類否判断が行われると考える。
    但し、従来までの審査実務と同様に、音商標を構成する音の要素・言語的要素の識別性及びこれら要素の不可分性を勘案のうえ、各要素を分離観察し、要部抽出したうえで商標の類否判断が行われる場合がある。
    また、言語的要素が要部として抽出される場合には、文字商標との類否についても判断が行われる。

    (例) ※両商標の音楽的要素は同一のものであるとする。

    (例)
    引用文献:「資料1 商標審査基準たたき台案 平成26年11月26日」
  • <独占適応性>
     商標法第4条第1項第18号の規定により、①商品等から自然発生する音や②商品等の機能確保に不可欠な音のみからなる商標は登録が認められない。
    但し、上記②の判断にあたっては、商品等の機能を確保できる代替的な音が他に存在するか、代替可能な音が存在する場合には、同程度(若しくはそれ以下)の費用で生産できるものであるかが考慮される。
②諸外国での登録例
EUTM(共同体商標) 豪州 米国
The mark consists of the sound of a human voice yodeling "YAHOO".
登録番号:2289049
指定商品:第9類、第28類
登録番号: 1230828
指定商品:第9類
説明文:The mark is a sound mark. The mark consists of a series of tones or musical notes without words, as set forth in the musical score and sound recording accompanying the application.
登録番号:2442140
指定役務:第42類
<識別力判断>
・識別力の判断は、商標の通常の使用(当該商品・サービスに関係する需要者を代表する平均的な者による使用)に従ってなされるのが一般原則。 ・識別力の判断は、通常の商標と同じである。但し、新しいタイプの商標は、本来的に識別力を有しないものもある。
・音商標については、他の同業者が、出願商標と同一又は類似の商標の使用を求めるか否か、という観点が、識別力の判断で考慮される。
・通常の商標と同じ扱いで識別力を判断する。
<類否判断>
各国によって様々な手法で判断されるものの、特別の審査基準は定められていない。
・異議申立がなされた場合に判断される。 ・類否判断は、通常の商標の場合と同様である。
・商品・サービスを扱う一般の需要者が受ける全体的な印象によって、判断される。
・混同を生ずるおそれの有無により判断される。




③出願戦略

音商標について登録を得た場合、基本的には登録を受けた音商標の全体について保護が得られることになる。従い、音商標の構成中に特に権利保護を求める部分が含まれている場合には、その部分のみを別個の出願とすることでより強い権利保護が可能となると考える。

また、言語的要素を含む音商標について、言語的要素と音の要素との一体性が高い場合には、言語的要素を文字商標として、また、音の要素のみを別個の音商標として出願することが望ましいと考えられる。特に、言語的要素にも音の要素にも識別力がある場合には効果的であると考える。但し、不使用による取消のリスクをも考慮した判断が必要となるであろう。









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4.動き商標

①日本で導入予定の制度概要

 動き商標は、改正商標法第5条第2項第1号に規定される「商標に係る文字、図形、記号、立体的形状又は色彩が変化するものであつて、その変化の前後にわたるその文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合からなる商標」に含まれるものとして整備される方向である。

  • <識別力判断>
    動き商標の識別力は、文字や図形等の標章とそれが時間の経過により変化する状況(標章の動き方※)を「商標登録を受けようとする商標」及び「商標の詳細な説明」から特定し、全体として判断される予定である。
    一般に「動き」は、宣伝広告等において注意喚起や装飾的効果を期待し、また、特定の立体的形状の機能を果たすために採用されるものであると考えられるため、標章そのものの識別力の有無が、商標全体の識別力の判断に影響を及ぼすと考えられる。
    なお、動き商標は変化の前後にわたる文字、図形等から構成されるため、これらの「動きそのもの」は商標の構成要素とはされない予定である。

    ※ここでの「動き方」とは、動いた結果、表現された(残された)「軌跡」のことをも指す。したがって、標章が軌跡として表現されたものについては、文字や図形等として識別力が判断される予定である。
    また、動いた結果の軌跡が残らないものの、視覚の残存効果等を利用して、残像として明らかに残るものについては、今回の法改正では商標の構成要素とはされない方向である。


    (例)動いた結果、表現された軌跡と動いた図


    自動車(動いた図)の軌跡が「SUN」の文字を描いている
    引用文献:「資料2 動き商標に関する審査基準について(案) 平成26年8月」
  • <類否判断>
     動き商標においては、動き商標を構成する、標章(文字や図形等)とその動き方(軌跡)が組み合わされた商標全体から生ずる外観、称呼及び観念をもとに類否判断が行われると考えられる。
    また、現行の審査においても、立体商標と平面商標(例えば、文字商標)のようにタイプが異なる商標間の類否判断は行われていることから、動き商標についても、性質上可能なものについては、タイプ横断的に類否判断が行われる可能性がある。




②諸外国での登録例
EUTM(共同体商標) 豪州 米国
商標番号:001864610
第35類 等
商標番号:810792
第29類 等
登録番号: 2373655
第9類
<識別力判断>
・識別力の判断は、商標の通常の使用(当該商品・サービスに関係する需要者を代表する平均的な者による使用)に従ってなされるのが一般原則。 ・識別力の判断は、通常の商標と同じである。但し、新しいタイプの商標は、本来的に識別力を欠くものもある。 特に規定なし。
<類否判断>
各国によって様々な手法で判断されるものの、特別の審査基準は定められていない。
異議申立がなされた場合に、混同を生ずるおそれの有無により判断される。 需要者の一般的な印象による個別判断がされる。 混同を生ずるおそれの有無により判断される。




③出願戦略

 動き商標は、「標章の形態そのものが変化する商標」と「標章自体は変化しないが位置が変わる商標」に大別できると考えられる。

  • <1>標章の形態そのものが変化する商標
     形態の変化に特徴がある場合が多いと考えられることから、まずは形態変化する商標を動き商標として出願することが望ましい。その上で、静止状態が目視されやすい初期形態と最終形態についても通常の商標として出願することが望ましいと考えられる。
  • <2>標章自体は変化しないが位置が変わる商標
     標章自体に識別力があるのであれば、まずは通常の商標として出願することが望ましい。その上で、位置が変わることで軌跡が残る商標については、動き商標としても出願することが望ましいと考える。
     一方、標章自体に識別力がないのであれば、動き商標として出願することになるが、動き自体には識別力はないと考えられているため、軌跡を残してそこに識別力を付与するか、使用により識別力を獲得することが必要になってくるであろう。








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5.ホログラム商標

①日本で導入予定の制度概要

 ホログラム商標は、改正商標法第5条第2項第1号に規定される「商標に係る文字、図形、記号、立体的形状又は色彩が変化するものであつて、その変化の前後にわたるその文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合からなる商標」に含まれるものとして整備される方向である。

  • <識別力判断>
    ホログラム商標の識別力は、文字や図形等の標章とそれが変化する状況を「商標登録を受けようとする商標」及び「商標の詳細な説明」から特定され、全体として判断される予定である。
    また、ホログラムは平面上に複数の表示面を与えるために使用されることもあり、その場合、それぞれの表示面に描かれた要素に着目して全体の識別力を判断される可能性がある。
     したがって、識別力のない文字、図形等のみから構成されるホログラム商標は、商標全体として識別力を否定されることが多くなり、一方、識別力を有する文字、図形等を含むホログラム商標は、商標全体として識別力を肯定されることが多くなると考えられる。
  • <類否判断>
     ホログラム商標においては、ホログラムの表示面に表示された文字や図形などの構成全体から生ずる外観、称呼及び観念をもとに、商標の類否判断が行われると考えられる。
    例えば、ホログラム商標に特有の問題であるホログラムが平面上に複数の表示面を与えるために使用されているときの商標の類否判断は、下記のように行われる場合が多いと考えられる。
     (ⅰ)複数表示面の各構成要素が不可分的に結合していると考えられる場合には、要部観察をすべきとする特段の事情がない(一連一体の商標)といえることから、当該成語の一部から成る文字商標とは類似しない。
    (例)

    引用文献:「資料3 ホログラム商標に関する審査基準について(案) 平成26年8月」

     (ⅱ)複数表示面の各構成要素が不可分的に結合しているとまでは言えず、各構成要素の商標全体に占める割合が低い等の事情がないような場合には、要部観察も行うことが適当であることから、各表示面に表示された文字から成る文字商標とは類似する。
    (例)

    引用文献:「資料3 ホログラム商標に関する審査基準について(案) 平成26年8月」

     (ⅲ)要部観察をしようとしている表示面に表示された文字や図形の全体に占める割合が低い場合等には、一の表示面に描かれた図形等と類似する商標であっても、全体としては類似しない場合が多いと考えられる。
    (例)

    引用文献:「資料3 ホログラム商標に関する審査基準について(案) 平成26年8月」




②諸外国での登録例
EUTM(共同体商標) 豪州 米国
商標番号:002117034
第9類 等
商標番号:1155005
第28類 等
登録番号: 78470087
第36類
<識別力判断>
・識別力の判断は、商標の通常の使用(当該商品・サービスに関係する需要者を代表する平均的な者による使用)に従ってなされるのが一般原則。 ・識別力の判断は、通常の商標と同じである。但し、新しいタイプの商標は、本来的に識別力を欠くものもある。 特に規定なし。
<類否判断>
各国によって様々な手法で判断されるものの、特別の審査基準は定められていない。
異議申立がなされた場合に、混同を生ずるおそれの有無により判断される。 需要者の一般的な印象による個別判断がされる。 混同を生ずるおそれの有無により判断される。




③出願戦略

 まず、ホログラム商標が複数の表示面を有し、それぞれに文字や図形が表示される場合、当該ホログラム商標が登録になったとしても、各文字・図形がそれぞれ独立して保護されるわけではない点に注意すべきである。

 特に、多数の表示面(例えば6面)にそれぞれ文字・図形が表示されるような場合には、1つの表示面に表示される文字・図形は全体に占める割合が低くなるから、その文字・図形が独立して保護される可能性は低くなると考えられる。よって、そのような場合には、ホログラム商標としての登録に加えて、各表示面に表示される各文字・図形についても通常の商標として登録を受けておくことが望ましいと考えられる。





6.諸外国で争われた主な事例

(1)H26年改正で我が国に導入された「新しいタイプの商標」の事例

① Qualitex事件(米国・色彩のみからなる商標 1995)

  • ⅰ) 概要:
     Qualitex社は、1950年代からドライクリーニング台のパッドに特殊なGreen-gold色を用いて製造販売していたところ、競合会社であるJacobson Products社が1989年に、Qualitex社が使用するグリーンゴールドに類似する色彩を用いてプレスパッドを販売。
     1991年、Qualitex社は米国特許商標庁にこの単色の商標を登録し、Jacobson Products社を被告として、商標権侵害及び不正競業法に基づき訴えを起こした。

  • ⅱ) 争点:
     単色の色彩からなる商標は、連邦商標法の登録要件を満たすか。

  • ⅲ) 米国連邦最高裁判所による判決要旨:

    (ア)単色に本来的に識別力が備わっていなくても、使用による識別性(secondary meaning)があって、出所表示機能を有すれば商標法によって保護される。

    (イ)機能性の法理の適用に関し、基礎的な法的要件を満たせば単色も商標となり得る(法的要件とは、a.シンボルであること、b.商標として使用されている、c.他社の製造・販売する商品から識別でき、機能的ではないこと)。
 

そして、Green-gold色は機能的ではないとして、連邦商標法の登録要件を満たすと判断された。



② レッド・ソール事件(米国・色彩のみからなる商標 2012)

  • ⅰ) 概要:
     フランスの「クリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)」(以下、ルブタン)は、1992年よりブランドの象徴として使用している「レッド・ソール(ソールに特徴的な赤色を付したハイヒール)」で世界的に有名であり、2008年に「レッド・ソール」の商標を米国において登録した【図1】(登録第3361597号、指定商品:第25類<女性用ファッションデザイン履物>)。

     その後、「イヴ・サン=ローラン(Yves Saint-Laurent)」(以下、YSL)がアッパー(上部)とソールが共に赤い靴を2011年4月に発売【図2 右】すると、これに対しルブタンが「レッド・ソール」の商標権を侵害すると主張、商標権侵害訴訟を提起し、これに伴う損害賠償請求および仮処分を申請した。
     一審のニューヨーク南部地区連邦地裁では、「ファッション業界で色は美的かつ装飾的な機能を持ち、競争においては不可欠な要素であり、赤い靴底が商標保護を受ける資格があると証明することは困難」として「レッド・ソール」の商標は認めず、ルブタンの請求を棄却したが、その控訴審で米国連邦控訴裁判所は一審の判決を覆し、同社の商標であると一部認める判断を示した。

  • ⅱ) 争点:
     「レッド・ソール」の商標が、色彩のみからなる商標として有効か。
     ファッション業界において美的かつ装飾的な機能を持つ色彩を、他業界と同様に保護すべきか。

  • ⅲ) 米国連邦控訴裁判所による判決要旨:

    (ア)単一の色彩について商標が保護されるには、商標の指定商品と競業者の商品を区別させることができる識別力が必要であり、この識別力は、商標が本質的に有している、あるいは、商標の使用によって「使用による識別力(secondary meaning)」を獲得することで得ることができる
     ルブタンは「レッド・ソール」を20年以上継続してブランドの象徴として使用しており、また、相当な資金を広報や広告に投資することで、赤い靴底=ルブタンであると一般に想起させている等、上記理由およびその他の証拠・説明から、使用による識別力(secondary meaning)を獲得したと判断するのに十分である。従って、「レッド・ソール」は識別力を持つ有効な商標である。

    (イ)ルブタンの「レッド・ソール」は商標権が認められた一方、YSLの「赤いアッパーに赤ソールの靴」は「レッド・ソール」商標の権利範囲に入っていないとして、YSLの商標権侵害は成立しないと判断した。
     連邦控裁は、本判決で侵害を認めてしまうと、今後、靴全体が赤一色であるものに限らず、あらゆる場合で競業者による赤い靴の使用が排除され、また、「レッド・ソール」の商標が識別力を獲得するのは、赤色のソールと靴のその他の部分が対照的な色使いである場合に限られることから、権利範囲を限定し(=ルブタンに訂正を命じ)、商標権が一部認められる旨判事。「特にファッション業界においては、色が支配されると、競争を大きく阻害してファッション市場を弱体化させてしまう」という一審判決を重視した結果である。

    (ウ)上記判決により、ルブタン側にとって「靴底と靴のその他の部分が対照的な色使いである場合に限定されるが商標権が有効であることが確認」され、YSL側にとっては「赤一色の靴は本件ルブタン商標の侵害とならず使用が認められる」結果となり、両者にとってバランスがとれた判決だといえる。


③ Libertel 事件(EU・色彩のみからなる商標 2003)

  • ⅰ) 概要:
     オランダのLibertel社が1996年8月27日付で出願した、オレンジ色の色彩のみからなる商標(指定商品・役務は通信設備やサービス等)について、BTMO(ベネルクス商標庁)が拒絶。同拒絶を不服として裁判所に訴訟が提起され、オランダ国最高裁判所への控訴から、欧州商標指令第3条(1)(b)の解釈についてECJ(欧州司法裁判所)に付託された事件。

  • ⅱ) 争点:
     単一色のオレンジ色そのものに関して、本来的に識別力を有するか。

  • ⅲ) ECJによる判決要旨:
     『色それ自体から構成される標章の場合、商標に関わる公衆の認知は、商標が表示される商品の外観とは無関係の標章から成る文字商標又は図形商標の場合と必ずしも同じではない。
     公衆は文字商標又は図形商標を商品の商業的出所を表示する標識として直ちに認知することに慣れているが、標章が商標登録請求の対象となる商品の外観の一部をなしている場合、必ずしも同じことが当てはまる訳ではない。
     消費者は、図案又は言葉といった要素が表示されていない場合に商品の色又は包装の色に基づいて商品の出所を推測する習慣を持っていない。原則として、現在の商習慣の下では、色それ自体が識別手段として使用されることはないからである。
     通常、色それ自体が特定事業者の商品を他から区別することは本来的には不可能である。色それ自体の場合、特に商標出願の対象となる商品やサービスの数が非常に限られており、関連市場が極めて特定される場合には、例外的な状況を除けば、以前に何らかの使用実績がない限り、識別性が存在するとは到底考えられない。』
     上記ECJ判決によって、商標が使用される商品及びサービスが限定的であり、かつ関連市場が非常に明確に限定されている等の例外的な場合には、それ自体としての識別性が使用によることなく認められる事例もあり得ることが示された。


④ Harley-Davidson事件 (米国・音商標 1994)

1994 年2月1 日 にHarley 社が、USPTOに以下の音の商標を出願した。

  • US Serial Number: 74485223
    商標説明:「“ The mark consists of the exhaust sound of applicant's motorcycles, produced by V-Twin, common crankpin motorcycle engines when the goods are in use.”(商品が使用されたときに、V-TWIN、共通クランクピンエンジンによって生じる、出願人のバイクの排気音からなる標識)」
    指定商品:第12類(自動二輪車)
    出願人:Harley-Davidson, Inc.

USPTOは出願公告を出し、商標登録されるかと思われたが、日本の大手バイクメーカー4社を含む競合9社が異議の申立てを行った。およそ6年間争った結果、2000年にHarley社は商標登録出願を取り下げた。




(2)H26年改正で導入が見送られたタイプの商標の事例

H26年改正では日本国での導入が見送られたものの、海外主要国では現実に保護されている商標の例として、以下のものが挙げられる。

  • 「香り」の商標:嗅覚で認識される商標。
  • 「味」の商標:味覚で認識される商標。
  • 「触感」の商標:触覚で認識される商標。
  • 「トレードドレス」の商標:市場において販売されるに際しての商品・役務の全体的外観ないしはイメージ(the overall appearance or image of goods or services as offered for sale in the marketplace)の商標。しかしながら、国際的にその定義が確立しておらず、保護される対象も一義的に定まっているとはいい難い。我が国においては立体商標や不正競争防止法の両方によって保護され得ると考えられる。


①「香り」の商標

  • Sieckmann事件(EU 2002)
  • ⅰ) 概要:
    広告や教育などを指定役務として、香り(「少しシナモンを思わせるところがある,バルサムのような果実の匂い」)の商標を、化学式や実物の標本や言葉での説明などの資料を付してドイツ特許商標庁に商標登録出願したところ、同出願を特許庁が拒絶。同拒絶を不服として、特許裁判所に訴訟が提起され、ドイツの商標法の解釈問題ではあるが、その根拠となった欧州商標指令の解釈を確認するため、ドイツ特許裁判所からECJに付託された事件。
  • ⅱ) 争点:
    「香り」の商標について、商標登録の可能性とその出願要件は何か。
  • ⅲ) ECJによる判決要旨:

    (ア)欧州商標指令第2条の「写実的表現の可能性」とは、標識そのものが視覚によって認識可能であること(visually perceptible)までは求めておらず、視覚的に写実的に表現され得る(can be represented graphically)ものであれば良い。
     但し、その表現は、明瞭且つ精密であって、それ自体として完結しており、入手可能・理解可能にして永続的且つ客観的であること(Clear, precise, self-contained, easily accessible, intelligible, durable and objective)が必要となる。

    (イ)香りの商標の視覚的表現として、化学式ではほとんどの者がその香りを認識できず、言葉での香りの記述は十分に明瞭且つ精密でなく、客観的でもなく、サンプルの寄託も安定的で持続的でないので、これらを組合せたところで写実的表現の要件を満たさない。

現状「香り」の商標の権利範囲特定のために考え得る、化学式、書き言葉による記述、香りのサンプルの寄託、又はこれらの要素の組み合わせのいずれによっても満たされないという、極めて厳格な写実的表現可能性の要件が示された。

以後、この判決が基準となり、欧州では「香り」の商標が写実的表現可能性の要件を満たすことはほとんど不可能と考えられている。実際、この判決後は「香り」の商標の登録が欧州で認められた例はない。



②「味」の商標 (EU 2000)

  • EUIPO 薬剤(出願番号:2000234)  ※登録拒絶事例
    説明文:The mark consists of the taste of artificial strawberry flavor.
    (訳:いちごの人工的な味からなる商標)
      出願日:2000年1月7日
    指定商品:第5類(薬剤)
    出願人:Eli Lilly and Company

また、米国でも、USPTO商標審判上訴部において、錠剤に関するオレンジの味の登録拒絶に対する上訴の審理がされ、当該標章が機能的であること、及び標章として機能していないことを理由に拒絶されている。ただし、一般論として味覚が標章として機能しないことは理由とされていない。



③「トレードドレス」の商標

  • TwoPesos事件(米国 1992)
  • ⅰ) 概要:
    Taco Cabana社【図3】が開店した、メキシコ料理のファストフード店の店舗外観・内装・イメージが、Two Pesos社【図4】のメキシカンレストランと酷似しており、その差止と損害賠償を請求した事件(トレードドレス侵害事件)。

    【図3】


    【図4】

  • ⅱ) 争点:
     本来的に識別力(inherently distinctive)を有するトレードドレスは、使用による識別力(secondary meaning)を獲得したという証拠がなくともランハム法第43条(a)によって保護されるか。
  • ⅲ) 米国連邦最高裁判所による判決要旨:

    (ア)トレードドレスとは「市場における商品の売買において供せられる商品、役務の全体的な外観又はイメージ」である。

    (イ)ランハム法第43条(a)で保護されるためには、第2条の商標登録要件の一般的原理が適用される。

    (ウ)本来的な識別性(inherently distinctive)があるときには、使用による識別力(secondary meaning)を獲得していることの立証は必要ない。
     米国商標法の下でトレードドレスの侵害が認められるためには、トレードドレスが自他商品・役務識別力を有すること(本来的識別力を有する場合と使用による識別力を獲得した場合が含まれる)、混同のおそれがあることのほか、非機能的(non-functional)であることが要求される。
     したがって、店舗外観において使用による識別力は要求されない旨判事されることとなった。

また、同じく「トレードドレス」の商標について争われたWal-mart事件(Wal-mart Stores, Inc. v. Samara Brothers, Inc.(529 U.S. 205)(米国 2000))では、「商品デザインにおいては使用による識別力(secondary meaning)が必要である」として判決が下されている。つまり、トレードドレスによって、それが本来的な「商品の包装」に係るものであればsecondary meaningの立証が不要な場合があるが、「商品自体のデザイン」、「ビジネス全体のイメージ」であればsecondary meaningの立証が不可欠で、識別力を認めるにあたって大きな違いがあるようである。

(3)上記の例を見るに、要求されている使用による識別力(secondary meaning)と非機能性(non-functional)の立証が難しく、我が国に導入された際にはこれらの点について争われるだろう。


以上




引用・参考文献
「新しいタイプの商標に関する海外登録例・主要判決例」特許庁
「新しいタイプの商標に関する調査研究報告書」財団法人知的財産研究所
「1998 B.C. Intell. Prop. & Tech. F. 101101 “The Trademark Registrability of the Harley-Davidson Roar: A Multimedia Analysis”」 Michael B. Sapherstein
「不正競争防止法における技術的形態除外説と米国商標法における機能性の法理との比較考察」山田 威一郎
「米国における『Trade Dress』の保護について」 板垣忠文
「Two Pesos v. Cabana - A. Definition of Trade Dress: Expert Testimony」 Cornell University Law School Social Science and Law
「Christian Louboutin Wins Trademark Battle for Signature Red Bottom Shoes」 INTERNATIONAL BUSINESS TIMES
「産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書」 産業構造審議会 知的財産政策部会 商標制度小委員会

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