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不正競争防止法について

原産地等の誤認表示(1)
原産地等の誤認表示(2)

 

原産地等の誤認表示(1)

1.はじめに

昨今、食料品を中心として、国産品が外国産品よりも高値で取引されることに目を付けて、外国産の商品を国産品と偽って販売する事案等が多数報道されています。

この問題に対処するために、「農林物質の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(いわゆるJAS法)や、「不当景品類及び不当表示防止法(いわゆる景表法)」等により、行政による取締りが規定されています。

また、行政による取締り以外に、不正競争防止法においても、「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為」を不正競争としています(同法2項1項13号)。

そして、この不正競争が行われた場合には、その制裁として、差止請求権(同法3条)、損害賠償請求権(同法4条)、個人に対する刑事罰(同法21条2項1号及び同4号)及び法人に対する両罰規定(同法22条)が設けられています。

そこで、主な判決例を概観し、不正競争防止法上の原産地等の誤認表示に対する裁判所の考え方をみてみたいと思います。

2.原産国及び国旗の誤認表示
(1)東京高裁昭和48年(う)第2922号(刑事控訴事件)

本事件は、日本製洋服生地に「ブラッドフォート、イングランド、ロンドン」や「マンチェスター、ロンドン、イングランド」等の転写マークを、アイロンを使用して押捺して、人を介して日本国内において販売した行為が旧不正競争防止法5条3号に該当するか否かが問題とされた刑事事件です。控訴審において、被告人は、地裁判決は「不正の競争の目的」の解釈適用の誤りがあると主張しました。

この点に関し、裁判所は、昭和35年4月6日最高裁大法廷判決にならい、「『不正競争の目的』とは、一般に不公正な手段、即ち公序良俗、真義衡平に反する手段によって他人と営業上の競争をする意図をいう」とし、「本件の同法(旧)第5条第3号、第1条第1項第4号の関係においては、自己の製造又は販売する商品に、該商品が真実製造された地以外の地において製造された、より優秀な商品である旨の誤認を生ぜしめる表示をするという不公正な手段によって他の業者と営業上の競争をする意図をいうものと解すべきであり、このような意図を有する当該行為者を処罰する所以が、被害を受ける他の営業者の利益の保護を図るとともに、一般消費者の利益の保護をも図ろうとするにあることは明らかである。」と一般的規範を確認しました。

そして、本件におけるあてはめにおいては、「被告人Aらが、その販売する紳士用洋服生地に前記の表示をした行為は、前認定のように同表示により一般消費者をして英国製であるとの誤認を生ぜしめること及び我が国において一般に英国製洋服生地が良質なものとして認識されているという公知の事実に照らし、前記のような不公正な手段に該当し、我が国における一般の紳士用洋服生地販売業者との競争において被告会社を不当に有利な地位に立たせるものであると認められる。

そこで、被告人A及びCについて、具体的に前記のような不正の競争の目的があったかどうかを検討するに、右両名が原判示のように多数の表示を反復継続して行った事実自体並びに関係証拠より認められる本件の表示をした洋服生地はすべていわゆる柄のあまりよくないイタリア人の行商人らに販売したもので、本件犯行当時被告人A及びCは、右イタリア人らがその洋服生地を国内において一般消費者に売りさばいていることを認識していたこと、右イタリア人らは本件犯行の約1年前から被告会社に出入りしており、当所は店舗においてアイロンを借りみずから本件と同種の転写マークを押捺していたが、次第に被告会社従業員がサービスとして販売のつど押捺するようになったこと、転写マークも昭和43年4月イタリア人の要求に応じCが被告人Bに発注して以来、これを被告会社に用意しておくようになり、同会社は・・・需要に応じて次々とこれを被告人Bに多数発注して納品させていたこと、この間被告会社に記事を仕入れに来るイタリア人の数が増加し、売上げも飛躍的に増大していること、更には被告人A及びCの各捜査官調書中の範囲に関する記述記載部分を総合すれば、右両名は、本件各表示が我が国の一般消費者をして、被告会社がこれを付して販売した日本製洋服生地が英国製であるとの誤認を生ぜしめるものであること及びその洋服生地が前記イタリア人らを通じ国内の消費者に大量に販売されていることを認識し、かつ右の表示をすることが不公正な営業手段であることを知りながら、この表示をすることによって売上げを増大させる意図でイタリア人らの要求に応じこの行為を続けていたことが認められるのであるから、前記不正の競争の目的があったというべきである。」と判示しています。

(2)東京高裁昭和52年(う)第522号(刑事控訴事件)

本事件は、指環等の展示即売を行うに際し、その宣伝広告用チラシにおいて、その事実がないにも関わらず「原石ベルギー直輸入」という大見出しを掲げ、さらに二重価格表示を行うとともに、そもそも保険会社は発行しない「宝石品質保証書」「盗難交通事故証書」の文字を併記した行為が旧不正競争防止法5条1号等に該当するか否かが問題とされた刑事事件です。本判決においては、争点は複数存在しますが、「原石ベルギー直輸入」との記載に絞って検討します。

控訴審において、被告人は、「本件チラシのどこを見ても、ダイヤモンドの原石が被告人会社の手でベルギーから直輸入されたという断定的表示は全くなされていないのに、原判決が『原石ベルギー直輸入』の大見出しをとらえてダイヤモンドの原石が被告人会社の手でベルギーから直輸入されたものであるかの如く一般読者をして錯誤誤信せしめるような虚偽の表示をしたと判示しているのは、『誤認ヲ生ゼシムル表示』を『誤認ヲ生ゼシメル虚偽ノ表示』と同じであると即断し、適用すべからざる事案に(旧)不正競争防止法5条1号を適用する誤りを犯したもの」と主張しました。

この主張に対し、裁判所は、「ところで本件各チラシによれば、『宣伝即売当日限り(全商品市価の約半額)』という大見出しに続いて、『原石ベルギー直輸入』の大見出しを掲げたうえ、その裏面の末尾に大きく被告人会社名を表示しているのであって、本件各チラシ全体を客観的にみる限り、宣伝即売当日に限り全商品を市価の約半額で販売する主体は被告人会社である旨を表示したものと認められるのと同様に、原石ベルギーから直輸入した主体もまた被告人会社であるとの表示をしたものと認められ、通常それ以外に解しようがないのであって、現に証人kらも本件各チラシを見てそのように思った旨の供述をしているところ、もとより被告人会社においては原石をベルギーから直接輸入した事実はないのであって、これは、・・・顧客が流通経路の短縮により本件商品が市価の約半額で販売されるものと思いこむことを承知の上で、二重価格表示と合わせて右の表示をしたものであると考えられ、本件チラシの右記載部分は一般読者をして『商品の品質、内容』につき誤認を生ぜしめる虚偽の表示あたるものと認められる。ただし、更に検討してみると、原判決はこの点に関し『商品の原産地』についても誤認を生ぜしめる虚偽の表示をした旨判示しているものと解せられるが、天然の産物であってもダイヤモンドのように加工のいかんによって商品価値が大きく左右されるものについては、その加工地が一般に『原産地』と言われているものであって、本件のダイヤモンドは世界でも有数の加工地とされるベルギーにおいて加工されたものであることが明らかであるから、本件チラシの前記表示は商品の『原産地』を偽るものではなく、原判決は、この点に関する事実を誤認したものであるが、(旧)不正競争防止法5条1号の解釈、適用を誤ったものといえるけれども、同条を適用した他の部分を合わせ考えるとき、この誤りは判決に影響を及ぼすものではない」と判示しました。

この判決は、結局、「天然の産物であってもダイヤモンドのように加工のいかんによって商品価値が大きく左右されるものについては、その加工地が一般に『原産地』と言われている」との規範を定立し、「本件のダイヤモンドは世界でも有数の加工地とされるベルギーにおいて加工されたものであることが明らかであるから、本件チラシの前記表示は商品の『原産地』を偽るものではな」いと結論付けています。

(3)松江地裁平成15年(わ)第116号(刑事事件)

本事件は、島根県の本店を有する被告会社が、α湖産やまとしじみに中国産しじみを混同させてネットに詰め、これに「産地直送 島根α湖産 特選やまとしじみ」等と記載されたラベルを各個に添付し、あたかもそのしじみがすべてα湖産であるかのように表示したしじみを製造して、同商品の原産地、品質等について誤認させるような虚偽の表示をした上販売した行為が不正競争行為に該当するか否か等が問題とされた刑事事件です。

裁判所は、「『本件の中心である産地偽装行為』についてみると、利潤を追求するための自由な営業活動も公正な競争秩序のもとに行われなければならないことは当然であるのに、被告人は、自己のしじみ販売の営業規模を維持・拡大して多くの利益を手に入れるため、中国産しじみを品質が安定しているために受容が大きく高価なα湖産しじみと偽って販売したのであって、これは、同業者間の公平を害するとともに、販売先や消費者を騙す行為として悪質な違反行為といわざるを得ない。しかも、同被告人は、近年社会情勢が変化し、種々の法改正によってこのような産地表示に対する規制が強化され、社会的に産地表示の適正が強く求められるようになってきたことを十分認識しながら、それ以前からの産地偽装を改めることなく、平成13年ころからはむしろ輸入しじみの取扱量を増やし、毎月数十トン単位で出荷する中で本件犯行に及んだのであって、本件は、会社ぐるみの組織的・計画的で常習的な犯行と認められる。一連の産地偽装によって被告会社が得た販売価格の差としての不法な利益は、しじみの価格が産地表示のみではなくその品質にも影響されることから特定するのが困難であるが、関係証拠によれば、計算上の額として数千万円を下らないと認められるし、α湖産しじみと表示したことによって初めて販売が可能になったという面も十分考えられ、実質的な不法な利益はさらに大きいと考えられる。島根県では、α湖産しじみのブランド化を推進していたものであり、本件犯行はそのブランドの信用を傷つけ、α湖産しじみに関連している多くの業者の信用をも失わせることにつながったのであって、被告人の行為が社会全体にもたらした影響は極めて大きいものと言わねばならず、県職員や漁業者、市場関係者等が相応の処罰を求めているのは当然のことといえる。産地偽装の疑いから、県の職員の立入検査があってもこれを拒否し、さらに、刑事手続による強制捜査がなされたにもかかわらず、逮捕される前日まで、ほぼ毎日産地偽装を続けていたという点でも犯情はよくない。これらの事情に照らすと被告人らの刑事責任は軽視できるものではない」と判示しています。

なお、量刑の面では、「被告人が、捜査段階当初は本件偽装に関して否認していたものの、その後は罪を認め、今では反省している旨公判廷で述べていること、同被告人には前科前歴がないこと、今回の事件で被告人会社は工場や事務所が既に閉鎖されており、被告人も今後しじみ関係の仕事には就かないと述べていること、本件については新聞やテレビなどでも大きく報道され、一定の社会的制裁を既に受けていることなど被告人らのために酌むべき事情も認められる」ことを理由に執行猶予付き判決としています。

(4)大阪地裁平成7年(ワ)第501号(民事事件)

本事件は、ヘアピンを販売するに当たり、その包装袋表面に外国国旗を印刷したシールを貼付する等の行為が、不正競争行為に該当するか否か等が問題とされた民事事件です。裁判所は問題となったシールや蓋等を詳細に検討した上で次のように判示しています。

「本件商品には、いずれも、透明の包装袋の表面に、外国国旗が端的にセールスポイントを示す文言とともに又は単独で印刷されたシールが貼られており、しかも、右シールは、その色彩、貼付位置により消費者の注意を惹くものであるところ、商品に右のような態様で外国国旗が表示されている場合、当該商品が当該外国製であることを容易に想起させるものであり、本件商品に接した消費者をして当該外国において製造されたものと誤認させる可能性が高いものといわなければならない。

加えて、商品であるヘアピンを入れた缶容器の蓋には、被告ワイ・エス・パークの商号の要部が『Y.S.PARK』『NEW YORK』というように英語で記載され、更に、透明の包装袋の裏面側に入れられた説明書には、『Y.S.PARK 世界のヘアピンコレクション』、『世界で初めて・・・世界中のピンを集大成-種類-』、『Y.S.PARK PIN OF THE WORLD』『Professional hair stylist Young-soo ParK scientifically formulated total hair care products for proven results.』『Y.S.PARK 世界のヘアーピン』『世界で初めて・・・世界中のピンを集大成-35種類-』と記載されており、これらの記載は、消費者の前記のような誤認をいっそう強めるものというべきである。

この点について被告らは、外国国旗は原産地を示す表示ではなく、それぞれのヘアピンの『タイプ』を示す表示であるとし、ヘアピンの形状は、国・地域によって特徴があり、それぞれの特徴に応じて、『アメリカンタイプ』『ヨーロピアンタイプ』と呼ばれており、このようにヘアピン業界においては、ヘアピンのタイプを表示する方法として国名を使用することは通常行われているところであり、外国国旗も同様の趣旨で使用されているものである旨主張する。

確かに、ヘアピンについて、従来から『アメリカピン』等の呼び名があったことが認められるが、これはピンの名称として一つの言葉を構成しているのに対し、外国国旗は国そのものを示すものであって、ヘアピンのタイプを表示するものとして外国国旗を使用することが一般的に行われているものと認めるに足りる証拠はないから、右主張は採用することができない。

もっとも、本件商品のうち、商品目録1の商品についてはイタリア国旗の表示のほかに『イタリアンタイプ』との文言が、同3、8、9,21ないし24の各商品についてはイギリス国旗の表示のほかに『ブリティッシュタイプ』との文言が、同4、10、18の各商品についてはアメリカ国旗の表示のほかに『アメリカンタイプ』との文言が、同7、25の各商品についてはフランス国旗の表示のほかに『フレンチタイプ』との文言が、それぞれ当該外国国旗が表示されているのと同じ面(表面)において表示されているところ、被告らは、これらの商品については、外国国旗を表示していてもこれが原産地を表示するものではなく、ヘアピンのタイプを表示するものであることは明確であると主張するが、右のような「・・・タイプ」との文言は、例えば、『made in Japan』『日本製』『国産』というような表示とは異なり、ヘアピンが当該外国製であることと相反するものではなくて両立しうるものであり、前示のとおり、ヘアピンのタイプを表示するものとして外国国旗を使用することが一般的に行われていると認めるに足りる証拠はないこと、商品であるヘアピンを入れた缶容器の蓋及び透明の包装袋の裏面側に入れられた説明書における前示のような記載を併せ考えれば、右のような外国国旗の表示のほかに『イタリアンタイプ』『ブリティッシュタイプ』『アメリカンタイプ』『フレンチタイプ』との文言が当該外国国旗が表示されているのと同じ面(表面)において表示されているからといって、外国国旗の表示が前示のとおり消費者をして当該外国において製造されたものと誤認させる可能性を打ち消しあるいは減殺させるものということはできないから、被告らの主張は採用することができない。」

「以上によれば、本件商品に付された本件表示は、いずれも、(旧)不正競争防止法2条1項10号にいう原産地誤認表示に該当するというべきである。」と判示しています。

なお、本事件においては、差止請求は認容しましたが、損害賠償請求については「本件商品に本件表示が付されていたことと原告製ヘアピンの売上げの減少との間に相当因果関係があるということは困難である。」として棄却しました。

3.小括

原産国の誤認表示については、裁判所は厳しい態度で臨んでいることが窺えます。

なお、(2)の事件で判示された、「天然の産物であってもダイヤモンドのように加工のいかんによって商品価値が大きく左右されるものについては、その加工地が一般に『原産地』と言われている」との判断は注目に値すると思われます。

また、(4)の事件のように、外国国旗も、使用の仕方しだいによっては原産国の表示に該当し、よほどの打ち消し表示がない限り不正競争行為に該当するということも重要であると思われます。

 

原産地等の誤認表示(2)

1.原産地(国内)の誤認表示
(1)東京地裁平成3(ワ)第10542号(民事事件)

本事件は、京都で製造、加工されたものではなく、京都産出された材料を含んでいない「柿の葉茶」に「京の柿茶」もしくは「KYO NO KAKICHA」の文字を含んでなる標章を付す行為が旧不正競争防止法2条1項10号に該当するか否かが問題とされた民事事件です。すなわち、「京の」「KYO NO」の文字が「京都」を意味するものかどうか争われました。

この点に関し、裁判所は、「被告標章を付した被告商品に接した一般需要者は、被告標章のうちの『京の』、『KYO NO』の部分は、被告商品の製造地あるいはその原材料の生産地が京都市及びその周辺あるいは京都府であることを表示するものと理解する者が多いと認められるところ、被告商品は、京都で製造、加工されたものでなく、またその原料も京都で産出されたものではないから、被告標章を被告商品やその宣伝広告に使用する行為は、商品及びその広告にその商品の原産地、品質に誤認させるような表示をするものとして、(旧)不正競争防止法2条1項10号の不正競争行為に該当すると認められる。」と判示し、「京の」は「京都の」を意味するものであると認定しました。

これに対し、被告は、「被告が『京の』という表示に託したものは、古都であり、我が国の伝統文化を地域的に代表するとともに、日本人の柿を愛する営みを貴族社会の中で発祥させた地の一つである『京』のイメージをかりて、被告がこの商品に込めた古雅(みやび)ないし優雅さ(エレガンス)のイメージを需要者に伝えようとしたものであ」ると反論しています。

この反論に対して、裁判所は、「しかしながら、被告標章の表示から、被告が主張するようなイメージで被告商品をとらえる需要者もいるかもしれないが、反面、柿の葉の茶と古雅なないし優雅なというイメージが調和しないことからすると、むしろ、『京の』、『KYO NO』の語を文字どおり素直に被告商品が、京都で製造、加工されたとか、京都で採取された柿の葉を原材料として製造されたものであると誤認する需要者も決して少なくないと認められる」として、この反論を斥けました。

また、被告は、「京都は、柿の葉の茶の名産地ではないし、柿の葉の茶の名産地なるものは国内に存在しないことからすれば、柿の葉の茶に京都を原産地として表示することには、商品の販売上格別の意味も実益もない」と反論しています。

これに対し、裁判所は、「被告商品の製造地あるいは原材料の生産地が京都市及びその周辺あるいは京都府である旨需要者に受け取られる被告標章を使用することによって、同地で伝統的な製造法によって製造されたもの、同地で古来の栽培法で栽培収穫された原材料を使用したとのイメージを与えられ、しかも、京都府の宇治市とその周辺が茶の名産地として有名であることは裁判所に顕著であり、茶と類似の飲物として認識される柿の葉の茶に、『京の柿茶』、『KYO NO KAKICHA』の表示を使用すれば、事実に反する表示を使用することにより商品に虚構の印象を付与」することになると判示しています。

なお、本事件の控訴審、上告審においては、原告商標が商標法3条2項の適用を受けて商標登録が認められていたため、争点が商標権侵害の成否に移り、旧不正競争防止法2条1項10号の問題は、両審において問題とはなりませんでした。

(2)大阪地裁平成19年(わ)第3407号(刑事事件)

本事件は、大阪府東大阪市に本店を有する被告会社が、平成15年産千葉県産コシヒカリ、平成16年産千葉県産コシヒカリ及び品種不明の未検査米を混合して、「平成17年産福井県産コシヒカリ100%」と印刷された包装袋に詰め込み、平成18年8月1日ころ、同府吹田市所在の会社に対し、前記包装に係る精米合計9袋(合計約51キログラム)を譲渡した事案です。

裁判所は、「被告会社では、遅くとも平成15年10月ころから同種行為を繰り返していたことがうかがえるところ、本件当時は、被告人Aの指示の下、製造担当者において、虚偽表示のなされた商品の製造や、その原料とするために、返品された精米の保管等を行い、営業担当者において、虚偽表示のなされた商品を表示と一致するものとして販売し、経理担当者において、立入調査等に備えて実態に反するとう精日報を作成して備え置くなどしており、本件は被告会社がその利益を図るべく組織として行った常習的な犯行の一環である。被告人らは、産地及び生産年等によって同一品種であっても精米の販売価格に差があり、表示の正確性は、商品の外観等からは明らかでなく、DNA鑑定等によって判別されることなどをいわば逆用して、表示と合致するDNAの玄米等を用いて虚偽表示のなされた商品を製造して販売したものであって、本件は計画性の高い巧妙な犯行である。しかも、被告人らは、被告会社に警察の捜索が入ったため、被害会社から代金支払いを待つよう求められたにもかかわらず、営業員を派遣して代金を回収しているのであって、詐取の態様にも悪質なところがある。

そして、本件により公正な競争秩序が現に害されており、また、食品の品質等の表示については、購入者がその真偽を自主的に検査することは実際上困難であり、専ら製造販売者の良識に信頼が寄せられているところ、本件はその信頼を根底から裏切ったものであって、本件が消費者らに与えた影響にも大きいものがある」と判示しました。

2.総括

原産国及び原産地の誤認表示は、公正な競業秩序を破壊するものであると同時に、消費者の信頼をも根底から覆すものであるため、裁判所は、民事・刑事ともに厳しい態度で臨んでいます。不正競争防止法1条の目的には、消費者の信頼保護は掲げられていませんが、少なくとも同法2条1項13号の原産国及び原産地の誤認表示については、裁判所は、消費者保護の側面を意識しているものと考えられます。

以上

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